ホットクロスバンとイースターとグッドフライデー

イースターが近づいています。キリスト教でない人にはピンとこない休日ですが、イースターはクリスマス休暇の次に重要なホリデーです。私は毎年大型連休のノリで過ごしていましたが、イギリス人と長く付き合っていくうちに、徐々に蓄積された知識が繋がって、突然合点がいくことがあり、イースターに対する見解も少しづつ変わっていきました。今日はイギリス人なら誰でも知っている、ホットクロスバンhot cross bunsというパンとイースターの関係について書きたいと思います。

この「パン」ですが、形は日本でもたまに見かける形状で、いわゆるちぎりパンに、カスタードがトップに絞ってあって十字の模様になっているやつを想像して下さい。なんか見たことある、と思ってしまいますが、イギリス人にとってのホットクロスバンは、私達外国人が想像する以上の古い歴史と親しみ、宗教的な絡みがあり、イギリス人と付き合いがある人なら必ず通る道と言っても過言ではありません。

昔はイースターの前に売られて、グッドフライデーという金曜日に食べたのが習慣だったそうです。私は宗教に関しては全く詳しくなく、大して調べていないので、復活祭やグッドフライデーそのものに関しては、wikiを見てみてください。簡単に言うと、金曜日に処刑されてしまったキリスト様ですが、その特別な金曜日に食べるモノがホットクロスバンで、食べることで魔除けや幸せを呼び込むとまで言われています。

今では一年中売られていて、イギリスのスーパーに行けば必ず見かけるポピュラーなパンですが、イギリス及びコモンウェルス諸国(要はイギリス側、スコットランドやニュージーランド、オーストラリア、サウスアフリカの国々)では一般的でも、アジアでは全く知名度がありません。夫は日本にいた時も何度かホットクロスバンの事を話していて、彼はクリスチャンではないので、イースターやジーザス様との関わりまでは説明してくれませんでしたが、十字の模様がパンの上にのってんの、バターをのせてトーストして食べるのが美味しいの、と言っていて、ふうん…と聞き流していましたが、毎年毎年聞いていると、また、他のイギリス人達からも繰り返し聞くと、あーなんか文化的にちょっと重要で、アイデンティティの一部なんかな、と思い始めるわけです。

今年のホットクロスバンの始まりは、夫の職場でサワードウの手作りパンをサイドビジネスで売っている同僚がいて(外国では、自分の得意な趣味を小さなビジネスにする外国人がたくさんいます)その彼がイースターにホットクロスバンを作るから、部署で買ってボクはバターを持って行くの、と言い始めたことがきっかけです。

イギリス人の、こなもん(メインではスコーンとトーストとかパンの意味で)に対するバターやクロテッドクリームに関するこだわりはちょっと異常で、前回イギリス人達とアフタヌーンティーをした時も、イギリス各地で、クリームが先かジャムが先かというシリアスな討論が巻き起こっている、というトピックに、ちょっと呆れてしまったばっかりだったのですが…

とにかく、トーストにはちょっとバターがあったらいいわよね、なんて生半可なものではなく、ホットクロスバンみたいなスペシャルなアイテムにはもっともっと、バターが大事で、バターがないパンなんて!というのがイギリス人達。

育児で疲れていて、やること山盛りなのに自分のケアは全く出来てなく、そんで自分のおパン様につけるおバターをくれくれ何度も言われると、頭にきます。が、これも文化の違いと腹をくくらなければなりません。これが国際結婚。

さて、ウチのイギリス人だけでなく、職場のイギリス人にもとっても大切なパンであるとは分かったのですが、つい先日、Facebookの駐在外人グループで、イギリス人と思われる人が、どこでイギリスっぽいホットクロスバンを買えます?と投稿しているのをみました。

返信もあり、イギリスでペストリーを学んだ人のベーカリーが速やかにお勧めされていました。

これを見て、なんとなく感じたのは、味がどうのではなくて、その時期を過ごすのに、それがないと雰囲気でないよね、みたいな、自分が日本人である事を再認識して、違う場所にいてもそのアイデンティティを楽しむ、みたいな感覚で…

私は、出費とか労力がめんどくさく、雛祭りや正月でさえしなかったのですが、更に言うと国際結婚の場合、インテリアを和風にするか洋風にするか、ある程度決めて統一感を出さないと、雰囲気がごちゃごちゃになり、残念な家になるから、もあるのですが。私自身は割と慣習に懐かしみを感じない部類に入ると思うので、他の日本人の人はもっと色々やっているんだと思います。

というのも、韓国でちょっと参加している日本人のグループで、四季のイベント時の食べ物、例えば恵方巻きやチラシ寿司、柏餅などを共同で購入するのを呼びかけている人達がいて、私は買いませんでしたが、なんとなく気持ちが動いたのは事実です。私のように日本からだいぶ気持ちも体も離れてしまった日本人でさえ、季節行事のフードは身に染み付いていて、飾りなんてなくてもおせち料理があったら…と思うものなのです。

コロナで、海外が大好きなのに日本から出れない人もたくさんいるだろうし、普段なら年に数回は帰って家族の顔が見れるのに、帰国できないで駐在している国にずっと留まっている人も、たくさんいます。そんな人たちにとって、食べ物は故郷を思い出して、いるような気持ちに浸れる最高の手段なのです。