make your bed

きっかけはred mistでした。

red mist:uncontrollable rage, anger sufficient to stop clear thinking.

レッドミスト:コントロールできないほどの激怒、憤怒で正確に物事が見えなくなること

https://en.wiktionary.org/wiki/red_mist

都内への毎日の通勤で、往復二時間を満員電車の中で過ごしています。HSPの私にとって、大多数の他人と同じ車両に詰まっている状態はとっても辛く、騒音や人との接触にいちいち反応してしまいます。人の出す嫌なオーラやムードにも影響されて、自然に不愉快な気分になってしまうのです。電車の中で幸せを感じたことはないですね、なるべく不快にならないように防御策を考えているのですが。

つい最近、電車の中で中高年の男性を相手に嫌な体験をしました。というのも彼が大きな荷物で私を横に押していて、あからさまなので、チラッと見たら睨み返してくるのです。どうもそのオジサンは定席を狙っているようで、次の駅で目の前に座っている男性が降りることを知っているみたいでした。知らない私は、席が空いたので座ろうと思ったのですが、ものすごい勢いで弾き飛ばされ、席を取られてしまったのです。自分が勝ったにもにも関わらず、オジサンは始終ご機嫌斜めで、私も頭に血がのぼってしまって、蹴り飛ばしてやろうかと思いました。

結局私は次の駅で降りて、車両を変えました。さっきは本当に喧嘩ふっかけそうだったな、と思うと怖くなり、こんなに攻撃的な性格ではなかったのにどうしたんだろう、と考えました。

私は以前格闘技をやっていて、それを始めた理由としては、自己防衛の方法を身につけたい、という思いからでした。練習をしている間には色々なお師匠さんにつく機会があり、日本の山奥に、“ただ立ち続ける、立つことから全てが始まる”と静かに語るカンフーマスターに会いに行った事もあります。彼は素手で私の上段蹴りを受けて、『うん、いい蹴りだね。』と言うと、これがあなたの本気ですか?本気で蹴ってきなさい、と促しました。

そんなことを言う人間には会ったことがなかったので、怯みました。でもこのチャンスを生かさなければ、と思い真剣に蹴りを繰り出していると、『今までは私の中であなたのパワーを吸収していました。今からあなたにその力をそのまま返すね。』と言いました。意味はわかりませんでしたが、次も全身で蹴りに行くと、次の瞬間、私の体は吹っ飛んで2メートル先の畳に上向きに転がっていました。『これがあなたの蹴りの威力、私はそれを吸収することも、跳ね返すこともできます。』と言いました。

人生の中で最大の“目からウロコ”的な経験でしたが、そのマスターの素晴らしいところは、『武術は他人を傷つけるものではない、大切なヒトを守るためのものだから。』と繰り返し説いていたことです。

そんな突出した経験を持っていましたが、人生は長く厳しいものですし、記憶は薄くなり、思い出も遠くなります。でも巡り巡って、15年も経った後に、違う人間から突然同じ様な事を言われると、デジャブを見るような不思議な気持ちになるものです。

ディーはまず、何事もなくて良かったね、今日はもう終わったから、今はまだ嫌な気分だろうけど、明日の朝は少し良くなるよ、と会話を始めました。

ディー『チャンチャンさ(私の呼び名)、そういう格闘技とかやってた人って、人よりトレーニングされて格闘に長けているからこそ、自制できるようになっているんじゃないの?強くなることは人を傷つけるためのものではないでしょう。』ハッとしました。その昔のカンフーマスターの記憶がフラッシュバックしたのです。

私「そうだね。そうだった、今思い出したよ。武術は大切な人を守るためのものだった。有難う。でもね、その瞬間は、本当に喧嘩してやりたいと思っちゃったんだよ。こんな風に思うこと殆どないのに、今回はもしトリガーがあったら危なかったよ。」この8年位、鬱のおかげで攻撃的な私は消滅していたんです。

ディー『それはね、red mistって言うんだよ。至って普通の人間だった人が、レッドミストの状態になると、見境がつかなくなって一線をこえちゃうんだね。それで犯罪者の仲間入りしちゃうんじゃん。よくあることだよ。』

ディーは犯罪心理学のドキュメンタリーを見るのが大好き、犯罪者のサイコロジーにはちょっと詳しいのです。

ディー『チャンチャンもanger management(怒りの自制)のトレーニングした方がいいかもね。僕が日本に行って拘置所に会いに行かなきゃいけないとか嫌だからさ、はは。』

ディー『Team Sky(ツール・ド・フランスなどに参加している世界で1番強い自転車競技チームのひとつ)のメンタルトレーニングは、自転車に乗ってない陸上のトレーニングで、コーチがわざと選手を怒らせて、それを対処する方法を練習させるんだよ。ほら自転車ってタイヤがパンクしたり、ホイールが壊れたり、後ろに突撃されて転んだり、自分以外の理由でレースがうまくいかないことが沢山あるじゃん。その時に腐って、あーもうダメだって投げ出せる競技じゃないでしょう、どんなに嫌でも悔しくても、またレースをスタートしなきゃいけないんだから。』

カッと怒りそうになった時に、それを置き換えて、これは私の問題ではない、と冷静になり、悔しいとかムカつくとかいう感情を流して、目の前のことにフォーカスするそうです。私の場合、むかつくオジサンが目の前に座っていたので、なかなか受け流せない状況でしたが…

ディー『次にやることはなんでしょう?チャンチャン』

私「make my bed?(ベッドメイキング?)」

ディー『そうでーす!!どんだけshitな1日でも、朝ベッドを整えておけば、帰ってきた時に綺麗なベッドが迎えてくれる。朝一番に、その日の最初のタスクをこなせれば、それが自信になり、他のタスクもやり遂げられる。』

アメリカのネイビーSEALチーム、入隊までの過酷なトレーニングで有名ですが、そのシールチームに1977年–2014年の間貢献した、William H. McRavenが大学の卒業式で話したスピーチがとっても素晴らしく、私達夫婦の中でひとつの大きなquoteになっています。

If you want to change the world don’t ever, ever ring the bell

もし世界を変えたいのであれば、決して、決して鐘を鳴らしてはいけない。

SEALトレーニング施設内には、鐘があり、それを鳴らすことで自分は辞めると表明できます。鐘を鳴らすことは、全ての終わりを意味するのです。

スピーチの中で、自分一人では何も達成できないので、成功には仲間が必要なこと、また、人を見定める時は、その人の姿形でなく、ハートの大きさではかるべきだということ、成功するためには揉みくちゃになって失敗しても前に転がりでなければならないこと、失敗や挫折は逃げられるものではないので恐れてはいけないこと、時にはリスクを承知で頭から突っ込まなければならないこともあることや、敵と正面切って向き合い戦わなければならない時もあること、を伝えています。彼のメッセージは全て彼自身の経験から紡ぎ出されたもので、言葉の重みも深さも突き抜けています。とても長いスピーチですが、私の歴代トップ10に入る名スピーチなので、時間がある時に見てみて下さい。

ディーはいつも大らかで、私を頭ごなしに否定せず、何がベストかを考えて、とっても噛み砕いて話をしてくれます。日々に忙殺されて、大事な人や大事なことを忘れてしまうのですが…。彼のように気づきを与えられる人はそうそういないので、私はディーを只者ではない奴、と思っています。

気を締めてより良く生きるように頑張りたいと思います。

テキサス大学オースティン校 2014年度卒業式スピーチbyWilliam H. McRaven
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